フロンの漏洩点検が義務化されました。

1)フロン問題は未解決です

  • 2009年3月、経済産業省発表の機器別のフロンの使用時排出調査によると、業務用冷凍空調機器では、年間、充塡量比2~17%のフロンが漏えいにより大気へ排出されています。
  • 二酸化炭素(CO2)の数百~4千倍以上の温室効果をもたらす代替フロンの使用時漏えいが今大きな問題となっています。
  • 2020年には、CO2換算で約4,000万トンのHFC(冷媒フロンの1つ)が冷凍空調機器から排出されるおそれがあります。
  • 仮に、家庭用エアコン1台に使用しているフロン(R410A約1kg)が全量大気に放出された場合のCO2換算値は、Lサイズのレジ袋約14万枚を製造する時に発生するCO2に相当します。

2)『フロン排出抑制法(以下「法」という)』が平成27年4月から施行されました

<正式名称と内容>
「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(改正前:フロン回収・破壊法)」

  1. 使用の合理化
    フロン類の使用の抑制
  1. 管理の適正化
    排出量の把握、充塡量、回収、再生、破壊等フロン類の排出抑制

2-1)法の対象機器は「第一種特定製品」です

・「第一種特定製品」とは
“業務用”の空調機器(エアコンディショナー)及び冷凍冷蔵機器であって、冷媒としてフロン類が使われているものをいいます。但し、第二種特定製品(カーエアコン(荷台を除く))、家庭用製品(家庭用冷蔵庫・家庭用ルームエアコン)を除きます。
・「第一種特定製品」例
業務用空調機器、冷凍冷蔵ショーケース、定置型冷凍冷蔵ユニット、ターボ式冷凍機 など

・業務用」とは
製造メーカーが業務用として製造・輸入している機器です。使用目的が業務用であっても、製造メーカーが家庭用として販売している場合がありますので、事前に製造メーカーにお問い合わせください。

2-2)機器の「管理者」の定義

  1. 管理者とは、原則として、当該製品(機器)の所有権を有する者(所有者)で、会社が所有していれば、法人が管理者となります。会社や事業所以外で、個人事業者(スーパー、コンビニエンスストア、売店等の経営者)も製品を所有していれば対象となります。
  2. 契約書等の書面において、保守・修繕の責務を所有者以外が負うこととされている所有者以外が管理者となる場合は、その者が管理者となります。

※参考※

  • リースやレンタル等の場合

リース:使用者、レンタル:所有者(レンタル会社)、割賦販売:使用者

  • テナントの場合

建物に据え付けてある機器:建物の所有者、テナントに所有権がある機器:テナント(使用者)

  • 機器等を共同所有している場合

所有者間で話し合い、管理者を1者に決める

3)管理者の責務(判断基準)

管理者は、冷凍空調機器を使用するにあたって、フロン類の漏えいを防止するために、以下の事項について守らなければなりません。

3-1)機器を設置する時(設置業者や保守・メンテナンス業者とよく話し合う)

適切な設置、適正な使用環境を維持し、確保すること。

  1. 設置場所の近くに他の機器や大型トラックが通る道路など、大きな振動が起こりやすい場所はできるだけ避けること。
  2. 設置後、点検や修理を行うために必要なスペースを考慮すること。
  3. 排水板、凝縮器・熱交換器の定期的な清掃を行うこと。
  4. 排水の定期的な除去を行うこと。
  5. 機器の上部に他の機器を設置する場合は十分注意すること。

3-2)機器を使用している時

3-2-1)簡易点検

全ての機器を対象に、3ヵ月に1回以上の簡易(日常)点検を管理者自ら実施すること。
・日常的に実施することで、漏えいを早期に発見し、また最小限にすることを目的とする。
・全ての第一種特定製品が対象となる。
・異音、外観の損傷、腐食、さび、油にじみ、霜付き等を確認すること。
・安全で容易に点検できる範囲で実施すること。
・漏えいの疑いがある場合は、専門業者へ相談すること。

3-2-2)定期点検(開始時期については後述4-2)

1.下記の機器については、専門業者へ依頼し、定期点検を実施すること。なお、次の記載内容は「機種」「圧縮機電動機定格出力」「定期点検頻度」の順です。
・エアコンディショナー/7.5kW以上50kW未満/3年に1回以上
・エアコンディショナー/50kW以上/1年に1回以上
・冷凍・冷蔵機器/7.5kW以上/1年に1回以上
2,一定規模以上の機器の定期点検は、「十分な知見を有する者」(専門知識を持った者)いわゆる「冷媒フロン類取扱技術者」等が実施すること。
3.「圧縮機電動機定格出力」とは、基本的には圧縮機を駆動する電動機の定格出力をいうが、ガスヒートポンプエアコン等で駆動に内燃機関(エンジン)を用いる機器については、当該内燃機関の定格出力をいう。
4.複数の圧縮機がある機器の場合、冷媒系統が同じ(複数の圧縮機が同じ冷媒配管で接続されている場合)であれば合算して判断すること。

 

3-3)フロンの漏えいを発見した時

1.速やかに漏えい個所を特定すること。
2.適切な専門業者に修理を依頼すること。
3.適切な専門業者にフロン類の充塡を依頼すること。(機器を修理せずに充塡することは原則禁止)

3-4)点検や修理をした後

1.適切な管理を行うため、機器の整備(点検・修理・充塡・回収)については、履歴を記録すること。
・機器の整備の際に、整備業者等の求めに応じて当該履歴を開示する必要がある。
・点検・記録簿の様式は任意である。
・点検・記録簿に記載する内容(次に示すのは必要事項)等は、専門業者へ確認し、また、機器ごとに記録を残すこと。

a.機器の管理者の氏名又は名称
b.機器の設置場所及び機器を特定できる情報
c.使用しているフロン類の種類及び量
d.点検の実施年月日、実施者の氏名又は名称、点検内容及びその結果
e.機器の修理の実施年月日、実施者の氏名または名称、修理内容及びその結果
f. フロン類の漏えい又は故障等が確認された場合における速やかな修理が困難である理由及び修理の予定時期
g.機器の整備時にフロン類を充塡した年月日、充塡回収業者の氏名又は名称、充塡したフロン類の種類及び量
h.機器の整備時にフロン類を回収した年月日、充塡回収業者の氏名又は名称、回収したフロン類の種類及び量

  1. 記録簿は、その機器を破棄するまで保存すること。
  • 記録保存することで、機器の延命と効率的な運転が可能となる。
  • 機器を他社に売却・譲渡する場合は、記録簿又はその写しを売却・譲渡先に引き渡す必要がある。

3-5)フロンの漏えいを発見した年

1.1年間にフロン類をCO2換算値で1,000CO2-ton以上漏えいした事業者は国へ報告する義務がある。
漏えい量 = 充塡量 × GWP(CO2換算値)/1,000 ≧ 1,000CO2-ton
※充塡量 = 機器の整備時における(充塡量 - 回収量)(kg)

2.機器から漏えいしたフロン類の量を直接把握するのは困難であるため、充塡回収業者が発行する以下の証明書から算出すること。

  • 充塡証明書
  • 回収証明書

3.年度終了後、7月末日までに、事業所大臣へ報告すること。4.国に報告された情報は、整理した上で公表される。

3-6)機器を破棄する時 (法改正前からの義務)

1.第一種フロン類充塡回収業者に依頼して、フロン類を回収した後に機器を破棄すること。
2.回収依頼の際は、行程管理票を交付しなければならない。

4)点検にあたっての注意事項 

4-1)各種点検前の準備

1.点検機器の所在の確認とリスト化を行います。
2.上記1のうち、7.5kW以上の機器の確認を行います。

4-2)定期点検の開始時期(1回目/平成27年開始)

2回目以降は、1回目の実施日から起算します。

  • 「1年に1回以上」

平成28年3月末までに1回以上点検します。

  • 「3年に1回以上」

平成30年3月末までに1回以上点検します。

4-3)休止中の機器

1.簡易点検は実施します。
2.定期点検は、定期点検頻度を超えて休止している場合は不要ですが、使用を再開する場合は、漏えいが無いことを確認します。
※春・秋における使用停止中は休止ではありません。

5)管理者への罰則

5-1)フロン類のみだり放出

1年以下の懲役または50万円以下の罰金

5-2)管理者の判断基準違反 (3-2、3-3、3-4)/行程管理票交付違反 (3-6)

50万円以下の罰金

5-3)国から求められた「管理の適正化の実施状況報告」の未報告、虚偽報告

20万円以下の罰金

5-4)立入検査の収去の拒否、妨げ、忌避

20万円以下の罰金

5-5)算定漏えい量の未報告 、虚偽報告 (3-5)

10万円以下の過料

6)改正法対応に関する注意事項

1.機器点検等を求めるものであって、機器の買い替え・冷媒の入れ替え等を強制するものではありません。
2.モントリオール議定書に基づき、オゾン層破壊効果を有する「HCFC(R-22等)」の生産等が2019年末をもって中止されますが、HCFC使用機器の使用の中止を求めるものではないので、2020年以降も使用し続けることは可能です。
3.第一種充塡回収事業者の充塡の基準として、次の2つが定められます。環境省・経産省の指示により冷媒入れ替えが必要として、冷媒を販売する事業者に注意してください。
・充塡するものが法律に基づき機器に表示された冷媒に適合していること。
・当該冷媒よりも温暖化係数が低いもので、当該製品に使用して安全上支障がないものであることを当該製品の製造業者等に確認すること。

※メーカー指定冷媒等以外への入れ替えは禁止されています。